名寄産の牛肉がスーパーに並んでいない、とふと気づいた人がいた。その気づきが、ちゃんと動きになっている。
地域情報メディア『なよろレンズ』編集長のクウです。鍼灸院を営みながら名寄の話題を追っています。食べもの、農業、地域の仕事の話には、つい目が止まってしまう性分です。
今回は、名寄市内の獣医師夫妻が取り組む「名寄和牛」ブランド化の動きを軸に、どんな牛肉なのか、いつ買えそうなのか、地域にとって何がうれしいのかを順番に見ていきます。
名寄産の牛肉がなかった、という現実
名寄市は道北の農業地帯の中心にある。酪農家も多く、牛は身近な存在だ。それなのに、地元スーパーに「名寄産」と書かれた牛肉は並んでいなかった。
この動きの中心にいるのが、獣医師の好本充徳さんだ。わたしも商工会議所青年部の活動を通じて何度かお会いしたことがある。温厚で、人の話をよく聞く方という印象が強い。その好本さんが「地元スーパーに名寄産の牛肉がない」という事実を放っておかなかった。
夫妻で牧場を継いだのが2026年4月のこと
好本さんと、家畜人工授精師の資格を持つ妻・佑妃さんが、離農を予定していた和牛の繁殖牧場を引き継いだのは今年4月のこと。現在は約50頭を飼育している。
牧場は名寄市内の丘の上にあり、「レジーナヒル」と名付けられた。18ヘクタールの放牧地に湧き水が流れる環境で、今月から名寄和牛になる牛の放牧が始まった。販売の目標は2026年中とされている。
乳牛に和牛の受精卵を移植するとはどういうことか
好本さんのビジネスの軸になっているのが「受精卵移植」という技術だ。少し分かりにくいので整理しておきます。
- 受精卵移植とは
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和牛の受精卵を、乳牛(ホルスタインなど)の子宮に移植して出産させる技術。生まれる子牛は和牛になる。
- 酪農家にとってのメリット
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乳牛から和牛の子牛が生まれることで、市場での取引価格が上がる。酪農家の収入安定につながる可能性がある。
- 好本さんの役割
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受精卵の移植を地域の酪農家に提案し、生まれた子牛を自ら買い取って育てる仕組みを構築している。
酪農家が牛を手放さなくても収益が上がる仕組みを作ろうとしている点が、このアイデアの肝だと思います。地域の畜産全体を支える発想になっています。
道北ビジネスプランコンテストで最優秀賞を受賞
このアイデアは2025年2月、旭川市で開かれたコンテストで最優秀賞に選ばれた。名寄市からの受賞は初めてのことで、市としても話題になっていました。
2026年2月開催の「道北ビジネスプランコンテスト2025」でも、Good Moreとして再び最優秀賞を受賞しています。旭川産業創造プラザが主催する、道北6市3町を対象とした事業化支援の場です。受賞が続いているということは、計画の中身が外部からも評価されているということになります。
どんな牛肉として売り出す予定なのか
名寄和牛は、価格帯や用途によって二つの方向で考えられています。
- 繁殖の役目を終えた雌牛を肥育した「手頃な日常使いの牛肉」
- 一部の子牛を高格付けになるよう肥育した「贈答品向けの高品質牛肉」
- 名寄産スイートコーンを飼料に使う方向で検討中
「手頃においしく食べられる」という言葉を大事にしているところが、わたしには響きまし。ブランド牛というと贈答品のイメージが先に立つけれど、毎日の食卓に置けるものを作りたいという方向性は、地域の消費者には近い話になります。
名寄産スイートコーンを餌にする計画の意味
名寄はスイートコーンの産地としても知られています。その地域の特産品を飼料として使うことで、「名寄らしさ」を牛肉に込めようとする構想です。
現時点では「検討中」の段階とされているが、地域の農産物同士がつながる話として、農業関係者にも関心を持たれそうな方向性だと思う。飼料の内容が確定すれば、ブランドとしての独自性もより強くなります。

名寄のコーンで育てた牛肉って、なんかいい
今年中の発売とはいつ頃になりそうか
夏から一部の繁殖牛を食肉用の肥育に切り替える予定となっている。肥育には一定の期間が必要なため、販売が実際に始まるのは秋以降になる見通しのようです。
現時点では、どこで買えるか・いくらになるかといった具体的な販売先や価格はまだ公表されていません。販売が始まる際はGood Moreの情報発信やメディアで確認するのが確実ですね。
地域で第三者継承という選択が持つ意味
今回、好本さんが牧場を引き継いだのは「第三者継承」という形。離農する予定の農家から事業をそのまま受け継ぐやり方で、北海道の農業では後継者不足への対応として注目されてきた手段になっています。
| 継承の形 | 特徴 |
|---|---|
| 親族継承 | 家族が農地・設備を引き継ぐ従来の形 |
| 第三者継承 | 家族以外の個人や法人が事業ごと引き継ぐ形。後継者不在の農家でも廃業を避けられる |
土地も牛も地域に残る、という点でも意味がある選択だと思う。牧場がなくなれば、牛も仕事もそこで途絶えます。続けた人がいた、という事実が次につながっていきます。
名寄在住の人が今できる動き方
Good MoreのInstagramアカウント(@goodmore_nayoro)では、現在の活動状況を発信しています。販売が始まる前に、どんな取り組みをしているのかを追いかけておくのは一つの楽しみ方だと思います。
Good More(@goodmore_nayoro)のInstagramをフォローすると、販売開始の情報や牧場の様子を随時確認できます。
どの店舗で買えるか・贈答品の注文はどこでできるかは、今後の発表次第。公式情報が出た時点で確認しましょう。
口コミで話題になることが、地元ブランドには一番の後押しになる。まずは「こんな動きがある」と周りに伝えてみるだけでいいと思います。
名寄の食卓に名寄産の牛肉が並ぶ日
今週末、地元のスーパーに寄ったとき、牛肉の棚を一度見てみてほしいです。産地がどこか書いてあるかどうか、そこから気づくことがあります。
わたしも名寄に長く暮らしているけれど、地元産の牛肉が手の届く値段で並んでいる光景は、まだ見たことがないです。知人である好本さんがこの話を進めていると聞いたとき、あの穏やかな人がやるなら丁寧にやるだろうと、素直にそう思いました。
「名寄和牛」という言葉が、いつか普通に飛び交う日が来たら、それはこの夫妻がここに残ることを選んだからだと思います。みなさんも、ぜひその日を一緒に待っていてくださいね。













